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二人芝居「美幸－アンコンディショナルラブ－」に挑戦する大島優子（左）と鈴木浩介

　舞台「美幸－アンコンディショナルラブ－」（２７～３０日、サンケイホールブリーゼ）で二人芝居に挑戦する。「過激なせりふが多いんです。これまでの人生で発したことのない言葉。言い慣れちゃったらどうしよう…」と愛くるしい笑顔で困ってみせる。

　学校で執拗（しつよう）ないじめに遭い、悲惨な学生時代を送ってきた美幸役を演じる。就職した会社で出会った元役者の雄星（鈴木浩介）に自分と似た過去を感じ、無償の愛をささげることを誓う。その愛し方は猟奇的で時に滑稽。やがて愛はエスカレートし、美幸は彼を悲しませる人々に復讐（ふくしゅう）を企てていく…。

　作・演出を担当する鈴木おさむの妻でお笑い芸人の大島美幸がいじめを受けていた経験から着想を得て、極限状態から真実の愛を描く。１年半前、ラジオ番組の生放送中に鈴木からオファーを受けた。「二人芝居、大変そう…」と思いながらも「やります！」。その後、台本を手渡され、「え、これをやるの？」と衝撃を受けた。

http://www.sankei.com/west/news/160521/wst1605210005-n1.html
http://www.sankei.com/west/news/160521/wst1605210005-n2.html
http://www.sankei.com/west/news/160521/wst1605210005-n3.html

　「明るく元気」というイメージがあるからこそ逆に闇や陰の部分は濃いはず。そこを引き出したら面白いのでは－という理由で起用されたと後で聞いた。いじめを受けて心がゆがみ、愛する人のために常軌を逸した行動をとる美幸を演じているうちに愛しくなっていった。「とても素直で真っすぐな女性なんです」

　見る人が美幸の気持ちに寄り添えるように演じたいと意気込む。

　相手役の鈴木浩介は個性派で知られる。台本を読み込んだ２人の感想は全く違っていた。「私は、最初は衝撃を受けたんですが、だんだん『かっこいい』『痛快』と思うようになりました。でも浩介さんは“イタくて悲痛”な内容だと…」。男女によって、見る人によって違う。観客がどう受け止めてくれるのか、楽しみになったという。

　作品のテーマは、アンコンディショナルラブ＝無償の愛。「ポスターでは出刃包丁を持っていますが、怖くはないです。切ない、心が痛いという感じ。見返りを求めない愛というものを考えさせられる作品です」

　１時間半しゃべりっぱなしの二人芝居。演出の鈴木おさむからは「自由にやっていい」と言われ、「芝居で遊んでいいということに気づいて、すごく楽しい」と稽古に励む。舞台出身の鈴木浩介でさえ「こんなにハードなのはない」と苦戦するせりふの多さだが、「それを受け入れている大島さんは“極太”」と評されている。

　「浩介さんは５役もあるので大変。せりふ量も多いので酸欠状態でハァハァ言ってます。私は間近でいい刺激を受けています」

　頼もしい限りだが、「いえいえ、脳も体も酷使して毎日へとへとです」。陰影をまとった女優の顔がそこにあった。

文・杉山みどり

　おおしま・ゆうこ　昭和６３年、栃木県出身。平成１８年にＡＫＢ４８に加入し、中心メンバーに。２６年に卒業。「ヤメゴク～ヤクザやめて頂きます～」（ＴＢＳ）、「銭の戦争」（カンテレ）、「安堂ロイド～Ａ．Ｉ．ｋｎｏｗｓ　ＬＯＶＥ？～」（ＴＢＳ）などに出演。映画「紙の月」では第３８回日本アカデミー賞の優秀助演女優賞を受賞。初舞台「Ｎｏ．９－不滅の旋律」でヒロイン役を好演し、女優として高い評価を受けている。